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生物の歴史は染色体に刻まれている、と言われるように、真核生物のゲノムは、種に固有な染色体という構造物のセットとして収納されています。「染色体」を観察することによって、その生物種の細胞ゲノムを俯瞰することができます。私は、細胞周期の間期における核内染色体に着目し、細胞核内空間という観点から染色体や遺伝子の空間配置がどのような仕組みで制御されているのか、FISH(Fluorescence In Situ Hybridization)法を中心とした分子細胞生物学的なアプローチから探っています。間期核の染色体は「染色体テリトリー」という高度に区画化された構造を持ち、遺伝子密度や染色体サイズに依存した放射状の核内配置をとっており、発生や細胞分化の過程、あるいは生理的な環境の変化、老化や腫瘍化などによる遺伝子発現状態の変動に伴って、染色体テリトリーや遺伝子領域の空間配置がダイナミックに変化する現象が見つかってきています。また、特定の遺伝子領域が特定の時期に染色体テリトリーからループアウトする興味深い現象も知られています。さらに、ゲノム進化における染色体転座などの染色体再編成は、染色体テリトリーの空間配置が関与するものと考えられています。しかしながら、生物種や細胞種ごとに染色体テリトリーの動態が異なる報告があり、その空間配置の制御には、どのような因子が関与するのか、あるいは空間配置に関する統一的なモデルはまだ見出されていません。
そこで、具体的には、ヒトを含む霊長類を中心とした哺乳類、鳥類の培養細胞(初代培養、腫瘍細胞株、幹細胞、初期胚)を用いたマルチカラーFISH法、3D-FISH法、マイクロダイセクションによる染色体顕微切断法、ゲノム編集技術などを駆使し、ゲノム進化、初期発生、細胞分化、腫瘍化に伴う染色体テリトリー・遺伝子領域の核内配置分子基盤の解明を目指しています。